まひ・しびれの症状は、大きく分けると「脳」「脊椎・脊髄」「末梢神経(顔や手足の神経)」が原因で起こります。その中でも特に脳が原因の場合は緊急で治療を要する場合が多いため、問診や血液検査・画像検査を行い、まひ・しびれの原因が脳の病気ではないかを適切に判断することが重要になります。
特に、体の半身(右半身または左半身)だけに起こるまひ・しびれは脳の病気が原因となることが多いため、すぐに画像検査が必要です。
脳が原因となるもの
脳卒中(脳梗塞・脳出血など)
脳の血管が詰まったり(脳梗塞)破れたり(脳出血)すると、その瞬間から突然症状が起こります。その中でも、顔や手足のまひ・しびれは頻度の多い症状であり、多くは体の半身に起こります。そのような症状が突然起こった場合は早急に診察・検査を行い診断を確定する必要があります。入院で治療が必要となることが多く、緊急を要する病態です。
脳腫瘍
脳卒中の場合と同様に、多くは体の半身に症状が起こりますが、脳卒中のように突然ではなく、徐々に症状が進行していく場合が多いです。診断には画像検査が有効です。
慢性硬膜下血腫
脳と頭蓋骨の間にゆっくりと出血が溜まり、脳を圧迫する病気です。多くは高齢の方が頭を打った後にゆっくり出血が溜まるため、外傷から2週間〜3ヶ月経過した頃に起こります。出血が溜まったほうの脳が圧迫され、反対の手足の麻痺やしびれが起こります。こちらの診断にも画像検査が有効です。手術によって溜まった出血を取り除く治療を行います。
脊椎・脊髄が原因となるもの
頚椎症
加齢などで頸椎(首の骨)が変形し、中を通っている脊髄や神経が圧迫されて首・肩・腕のまひ・しびれが生じます。症状は片側のことも、両側のこともあります。診断には画像検査が有効であり、整形外科での精密検査が必要となることもあります。
椎間板ヘルニア
背骨の骨と骨の間のクッションの役割をしている椎間板が変形して飛び出し、神経を圧迫することでしびれや麻痺が起こります。診断には画像検査が有効であり、重症の場合は手術が必要な場合もあります。
脊柱管狭窄症
脊髄の通り道である脊柱管が、背骨の変形・椎間板の突出・靭帯の肥厚などで狭くなり、神経を圧迫することでしびれや麻痺が起こります。椎間板ヘルニアと同様に診断には画像検査が有効であり、重症の場合は手術が必要な場合もあります。
末梢神経が原因となるもの
糖尿病
糖尿病の三大合併症のうち、最も早く出現するのが末梢神経障害です。両手両足の先からしびれなどの症状が出現する、「手袋靴下型」の神経障害を認めます。血液検査で血糖値やHbA1cの値を検査して、糖尿病がないかを確認する必要があります。
アルコール
長期にわたってアルコールを摂取している場合にも神経の障害が起こることがあります。糖尿病と同様に、両手両足の先からしびれなどの症状が出現します。過去の飲酒歴が重要になります。
ギラン・バレー症候群
ウイルス感染などを契機に、免疫機構が自分自身の末梢神経を攻撃してしまうことによって起こります。約2/3の患者は、発症の1〜3週間前に風邪症状や下痢などの感染による症状を認めます。末梢神経が障害されてまひやしびれが起こり、多くの場合で症状は足から上に向かって広がります。呼吸をするための筋肉にまで症状が及ぶことがあるため、入院の上での治療が必要となります。
手根管症候群
手首にある、神経の通り道の「手根管」の中で正中神経が圧迫されることで、その先の指にしびれや痛みが生じます。消炎鎮痛薬やビタミン剤などの内服治療を行いますが、効果に乏しい場合は手術が必要になります。
その他
その他にも様々なまひ・しびれがあり、問診や診察に加え、必要に応じて血液検査や画像検査を行いながら原因を探していきます。