頭痛は誰しも一度は経験した事がある症状ですが、ときに危険な病気が原因で頭痛が起こることがあります。激しい頭痛が突然起こった場合や、頭痛の痛みが強い場合は特に注意が必要です。

まずは問診、画像検査や血液検査から、脳や脳血管などに異常がない頭痛(一次性頭痛)なのか、脳出血などが原因で起こっている危険な頭痛(二次性頭痛)なのかを判断することが重要になります。

一次性頭痛の代表的なものとしては、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛などが挙げられます。二次性頭痛の原因には、脳や脳血管の病気(脳腫瘍・くも膜下出血など)や、脳以外の病気(副鼻腔炎や薬物乱用頭痛など)があります。

一次性頭痛

緊張型頭痛

首や肩の筋肉の緊張が原因で起こる、最も多いタイプの頭痛です。首の骨(頸椎)の並びが悪くなり(ストレートネック)、筋肉の緊張を悪化させている場合もあります。筋肉の緊張を和らげるストレッチや、内服などで治療を行います。

片頭痛

こめかみが痛むことが多く、強いズキズキした痛みが数時間から数日続きます。女性に多く、視界にキラキラしたものが見える前兆(閃輝暗点)を伴うこともあります。

一般的な鎮痛薬で効果が十分でない場合は、トリプタン製剤という片頭痛に対する鎮痛薬を用いる場合もあります。また、頻繁に片頭痛が起こる方には、予防薬を内服してもらうことで頭痛の頻度を減らす効果も期待できます。

片頭痛に対する新たな治療薬
  • 2021年より、片頭痛の発作を抑制する新たな注射薬の「ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤」が保険適応になりました。
  • 4週間に一度の注射薬で、費用が3割負担の方で約12,000円程度と高価ではありますが、従来の治療よりも高い発作予防効果が認められており、片頭痛の発作頻度が多い方には有効な選択肢となります。

群発頭痛

若い男性に多く、片側の目の奥の激痛が同じ時間帯に連続して起こります。15分以上続く痛みが連続して起こり、長いときは1ヶ月以上にわたって痛みが続きます。通常の鎮痛薬では効果がなく、片頭痛薬が効果的です。

二次性頭痛(脳や脳血管が原因となるもの)

くも膜下出血

突然起こる頭痛が特徴で、「バットで頭を殴られたような痛み」と表現されます。ほとんどが激痛ですが、最初は軽い頭痛の場合もあります。多くは脳の血管にできた瘤(脳動脈瘤)が破裂することで発症し、発症した時点で1/3の方が命を落とす、非常に重篤な病気です。速やかに画像診断を行い、救急病院での処置が必要となります。

動脈解離

血管が突然裂ける病気です。首の周囲に強いエネルギーの外傷を受けることで生じる場合もありますが、原因不明で突然起こる場合もあります。日本人では首の後ろを通る血管が裂ける事が多く、後頸部〜後頭部の痛みを生じます。場合によっては脳梗塞やくも膜下出血を伴うこともあり、こちらも救急病院での処置が必要となります。

脳腫瘍

頭の骨の中で腫瘍ができ、脳を圧迫したり頭蓋内(頭の骨の中)の圧が上昇することで痛みが出現します。画像検査で発見することができます。

慢性硬膜下血腫

脳と頭蓋骨の間にゆっくり出血が溜まり、脳を圧迫する病気です。多くは高齢の方が頭を打った後にゆっくり出血が溜まるため、外傷から2週間〜3ヶ月経過した頃に起こります。手足の麻痺やもの忘れの症状を伴うこともあります。画像検査を行えば診断は比較的簡単であり、手術で溜まった出血を取り除くうことで治療できます。

二次性頭痛(脳以外が原因のもの)

高血圧

上の血圧(収縮期血圧)が180mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が120mmHg以上になると、高血圧による頭痛が起こることがあります。画像検査で異常が出る、高血圧性脳症という状態になっている場合もあり、その場合は入院での治療が必要となります。

副鼻腔炎

「副鼻腔」という空気の通り道に炎症が起こる病気です。額や頬に痛みがでることが多く、発熱を伴うこともあります。副鼻腔に膿が溜まっていれば、MRI検査で液体が溜まっているのがわかります。原因となっている感染やアレルギーに対する治療を行いますが、耳鼻科での治療が必要な場合もあります。

薬剤の使用過多による頭痛

「薬物乱用頭痛」とも言われており、鎮痛薬を飲み過ぎることでかえって頭痛が悪化してしまっている病態です。月に10日以上鎮痛薬を使用している場合はこの病態になっている可能性があります。予防薬を使って鎮痛薬の使用頻度を減らすなど、頭痛へのアプローチを工夫して鎮痛薬を中止する必要があります。

その他

その他にも様々な頭痛があり、問診や診察に加え、必要に応じて血液検査や画像検査を行いながら原因を探していきます。